日本酒女子図鑑#10

林紀子(「株式会社紋七」代表取締役)

千葉の日本酒を全国へ

現在、千葉県茂原市で飲食店を経営する「株式会社紋七」。その代表取締役である林紀子さんは、8年前に「千葉日本酒活性プロジェクト」通称「アク千葉」を立ち上げた。
「飲食店なので日本酒とはずっと関わりがありましたし、私自身が日本酒好きということもあって、“千葉の日本酒を盛り上げたい”という想いから立ち上げたプロジェクトです。千葉には35蔵ほどの酒蔵がありますが、全国的にはまだまだ知られていないなと。当時は千葉のお米を使って日本酒を造る千葉の酒蔵が少なく、私的には不思議でした。そこで、お米を作る農家さんから始まる酒造りを通して、“一から千葉を表現できないか”ということをお付き合いの深かった「木戸泉酒造」さんにお話をして、一緒にやりましょうとスタートしました。今では賛同していただける酒蔵さんも増え、規模感も大きくなってきましたので、色んな新しいことにチャレンジしている段階です。もっともっとアピールして、1人でも多くの方に千葉の日本酒を知っていただけるよう、引き続き活動していきたいと思います」。

アク千葉のメンバーと林さん

経営する店舗、古民家居酒屋「もんしち」も新たな試みを持って、今年7月にリニューアルオープンするとのこと。
「茂原市の都市整備事業で移転することになりました。千葉の食材と千葉の日本酒をクローズアップしてやってきたお店ですが、今回そのことをさらに強化しつつ、宿泊もできるようにして、もっと日本酒をしっかりと表現できるような場所にしていきたいなと思っています」。

身近にあった日本酒

林さんと日本酒の出会いは早い。
「今のお店は親が始めたもので、今年で50周年を迎えます。なので、生まれた頃から日本酒に囲まれていました。父が大の日本酒好きで、今から40年くらい前の第一次地酒ブームのときに初めて「新政(※1)」を飲んで、衝撃を受けたそうです。それからお店には全国の日本酒を置くようになり、私は日本酒のラベルを見て育ちました。お店のメニューがラベルで日本地図になっていて、小学校のときにそれで全ての都道府県を覚えました(笑)。お酒が飲めるようになって、OL時代の先輩に連れて行かれた居酒屋で初めて手に取ったのが、ジャケットの可愛い「上善如水(※2)」でした。日本酒が美味しいなと感じてからは、とにかく居酒屋さんに行っては日本酒を飲むということを続けて。そしてお酒の勉強もしていこうと思い、私がこの仕事を始めたときに唎酒師の資格取得、その後焼酎の資格とワインのソムリエの資格も取得しました」。

日本酒女子会と女性の力

「副代表の神谷さんと出会ったのがきっかけで、日本酒女子会を知りました。女性が日本酒を飲むことは、嬉しいという一言でしかないです。女性は今、パワフルですよね。嘘をつかず正直にいうので、女性が行く場所や女性に気に入られるものは、広がりやすいと思います。だから日本酒女子会のような活動はものすごく頼もしいし、私も一緒になってみんなに広めていきたいです」。
林さん自身も“千葉の日本酒を広げる”というパワフルな活動をしているが、お店にいても女性の力を感じることがあるそうだ。
「昔はおじさんの飲み物というイメージがありましたが、女性がお酒を飲む率は結構上がっていると思います。「もんしち」にも女性のお客さんがたくさん来ますし、若い方でも飲まれる方が多いです。新しいものにチャレンジしてくださる方もいるので、日本酒をオススメしたらハマったという方もいます。また毛嫌いしていたけど、うちで働くようになってから日本酒が飲めるようになったという社員やバイトもいたりするので、地道に広めていきたいと思っています」。

飲食のプロとして日本酒を飲む

仕事柄、外で飲むことがほとんどだという林さん。
「趣味と実益を兼ねている部分もあるので、どうしても視察のために外食をすることが多いです。お店で新しく宿泊施設をやるということもあって、最近はその視察に行っています。日本酒の蔵を改造したものや日本酒とのマリアージュやコースをしっかりと決めている施設など、そういう所の勉強をしている最中です。家でお酒を楽しむというよりは、とにかく外で日本酒を飲んでくる!(笑)」。
外食をしながら、魅力的なお店を見抜くポイントがあるそうだ。
「飲食店は難しいところがありますが、品揃えの多さより、例えばお燗をすごく美味しく飲むことができるなど、日本酒の“ひとつのこと”にこだわっているお店が魅力的だなと思います。この前見つけたお店で、静岡に「お燗と中華の店」があったのですが、私の中では分かる!と思い、かなりグっときました(笑)」。

日本酒で繋ぐ、新たな場所

待望のリニューアルオープンに向けて、表現したいアイデアの話は尽きない。
「お燗酒が美味しく飲める店を目指したい。お客様の希望する温度、お料理に合わせたセレクトと温度、酒器、などにこだわり、お燗酒の魅力を沢山の方に知ってもらいたいと思っています。あとオープンキッチンのカウンターの真ん中に、大きな日本酒冷蔵庫を特注で作ります。お客さん全員から日本酒のラベルが見えるようにして、料理人が日本酒を取り出し、自ら作った料理とのペアリングが提案できるようにします。お店を新しくする上では、”つなぐ”というテーマがあって、酒蔵さんとうちに来てくれるお客さんを繋ぐ。さらに酒蔵さんと農家などの生産者さんも繋いで、もっと良いもの・美味しいものをお客さんに提供できるようにしたいです。また、日本酒から出る副産物の酒粕も有効利用したくて。女性の美容に繋げたりするワークショップをお店の中でおこない、宿泊施設では酒粕せっけんを置いて、酒粕風呂もやろうかなと思っています。それと、スタッフの中に発酵マイスターもいるので、発酵文化とともに日本酒を皆さんに伝えていきたい。少しでも日本酒の間口を広げることで、日本酒と触れ合ってもらえる場所を作る体制を色々と考えています」。

千葉県人として”千葉の日本酒を広めたい”という想いと同時に、”日本にしかない日本酒文化を絶やさないように少しでも伝えていきたい”と語る、林さん。日本酒女子会の“千葉県アンバサダー”とも言える存在の彼女が、日本酒への想いを描き、形にした場所。今からリニューアルオープンが待ち遠しい。

※1 新政(あらまさ)秋田県新政酒造
http://www.aramasa.jp/

※2 上善如水(じょうぜんみずのごとし)新潟県 白瀧酒造
https://www.jozen.co.jp/top/jozenmizunogotoshi.asp

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