日本酒女子図鑑#7

柘植さやか(RPO・フリーランス)

コロナ禍で苦戦している日本酒業界の少しでも役に立てればと、たくさんの情報を日本酒女子会メンバー専用のFacebookグループページに投稿し続けてくれている、柘植(つげ)さやかさん。1本の日本酒との出会いから始まった、彼女の壮大な想いとは。

現在フリーランスとして、RPO(※1)という職に就く柘植さん。
「簡単に言うと、企業に代わって採用にまつわる業務をおこなっています。元々OLから始まり、数々の転職を繰り返し、広告の仕事など色々な業種を経験していく中で、縁あって今の職種に就きました。人を相手にしている仕事なので、依頼された会社に求められた人材を採用して喜んでもらえることや、自分が採用した人が会社の中で成長していく過程を見ていると、この仕事をやっていてよかったなと思いますね」。

始まりは1つの銘柄から

「そもそもお酒に興味を持ったきっかけは、『有閑倶楽部(※2)』という漫画です。登場人物が全員お酒にまつわる名前で、読んでいて子供ながらに、色んな種類があって面白いなと興味が湧いて。もちろん当時はお酒も飲めませんし、美味しいのかどうかも分かりませんでしたが、漠然といつかは飲んでみたいと思っていました」。
やがて大人になって念願のお酒を飲んだとき、思い描いた日本酒の味はどうだったのか。
「居酒屋さんに行って、飲み方も知らず、ただ“日本酒”とだけ書かれている銘柄も分からないお酒を飲んで、悪酔いしました(笑)。そんなこともあって最初は日本酒を好きではありませんでした」。
最悪の出会い方をした日本酒。しかし、あるきっかけが訪れる。
「デパートで洋服の販売員のアルバイトをしていたとき、スタッフのお姉さん達の中に日本酒が好きな人がいまして。たまたま飲みに誘ってくれたお店に、そのお姉さんのオススメのお酒『上善如水(※3)』がありました。どのご飯にでも合うから、と言われて飲んでみたら、初めて“この日本酒は美味しいな”と思い、そこで1つ銘柄を覚えました。そこからは、“上善如水は新潟のお酒だったけど、新潟には他にどんなお酒があるのかな”、“色々と飲んで試してみようかな”と思うようになり、他の銘柄も飲むようになっていきました」。

柘植さんの投稿した写真の一例

柘植さんの投稿にはたくさんの銘柄が登場するが、日本酒の知識は独学なのだろうか。
「完全に独学ですね。自分が好きな日本酒の味や好みをちゃんと研究したのは、ここ6〜7年くらいです。結構ラベルだけで買うことも多いですし、感覚だけを頼りに試飲を繰り返していく中で、好みのお酒の共通点は何だったのかを探すようになりました。今後は、利酒師の資格とかも取りたいなと思っています」。

好きな日本酒の話ができる日本酒女子会

イベント『持ち寄り日本酒女子会』の模様

そもそも柘植さんが日本酒女子会を知ったきっかけとは。
「Facebookにオススメとして出てきたんです(笑)。色々な酒蔵をフォローしているうちに、こんな会がありますよという紹介が来て。実際に参加したのは、2019年の『持ち寄り日本酒女子会』というイベントで、面白そうだから行ってみようと思いました。そのとき一緒に行く予定だった友達が来られなくなってしまい、私は1人で参加したのですが、本当にすごく楽しかったです。そのイベントは、参加者が好きな銘柄の日本酒を1本ずつ持ち寄るという企画だったのですが、被っているのは1種類くらいしかなく、皆さんほぼ違う銘柄だったのには驚きましたね。好みも職業も違うけど、好きな日本酒の話だけでずっと楽しくいられるということが、本当に面白いなと思いました」。

普段の飲み方は

「仕事は在宅中心ですが、基本的には週末に飲むことが多いです。平日に飲むと翌朝起きるのがすごく辛くなるので、ちょっと1杯だけとか、1合だけみたいに制限をかけています。代わりに週末は特に制限なしで、心置きなく!みたいな(笑)」。

写真左:まずは味見をし、そのお酒に合わせた料理を作るという/写真右:錫体験・江戸切子体験で手作りしたという自慢の酒器

酒器にもこだわりがあるのだとか。
「私の地元である長崎県や隣の佐賀県は焼物が有名ということもあり、子供の頃から陶器や器にふれる機会が多かったので、酒器を集めることが好きなんです。行く先々で酒器を見つけては買ってということを繰り返しているうちに、今では家にすごい数の酒器があり、毎回どの酒器でお酒を飲もうかと考えるのが楽しみです。形がちょっと変わるだけで、同じお酒でも香りも味わいも変わりますしね」。

想いは新潟、そして全国へ

彼女には今、本気で考えていることがあるという。
「タイミングさえ合えば、今の仕事を離れて、新潟県に移住したいと思っています。以前、新潟県で開催された『酒の陣(※4)』というイベントに行ったとき、参加していた酒蔵のすごい数に圧倒されました。本当に日本全国から酒飲みが大集合しているんだなと。そんな新潟県の酒蔵を巡りたいですし、行ってみて分かったことですが、県内限定酒がすごく多いんですよ。県外に出てこなくて、ずるいなと思いました(笑)。新潟県は、移住に対して積極的に取り組みをおこなっていますし、日本酒に対してもすごく力を入れていますよね。いつ頃から日本酒文化が盛んなのかなど、県の歴史にも興味があります」。

最後に、新潟県に移住したらやりたいことを聞いてみた。
「実際に新潟県の色々な産業を調べたりしていて、日本酒関連の仕事や発信する仕事に就けたらいいなあと思っています。最近は新潟市内なら雪も積もらないと聞いたりもするので、九州出身の私でも住めるのではないかと(笑)。やっぱり日本酒の歴史が残っているようなところは惹かれますね。新潟県の魅力を私が外に発信したいなと思います」。

上善如水で初めて美味しいと思った日本酒との出会いから、新潟県の日本酒に魅了され続けている柘植さん。そんな彼女が日本酒女子会の“新潟県アンバサダー”として、私達にたくさんの情報を届けてくれる日もそう遠くはないかもしれない。

※1 RPO
「Recruitment Process Outsourcing」(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)の略で「採用業務の代行」、企業の採用活動を外部にアウトソースすること

※2 有閑倶楽部 著:一条ゆかり
日本の少女漫画作品。1981年、『りぼん』(集英社)にて連載を開始

※3 上善如水(じょうぜんみずのごとし)新潟県 白瀧酒造
https://www.jozen.co.jp/top/jozenmizunogotoshi.asp

※4 酒の陣
新潟の酒蔵が大集合する、日本酒の一大イベント。酒蔵数は日本一。
https://www.niigata-sake.or.jp/sakenojin/

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